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大阪地方裁判所 昭和53年(ワ)947号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【主文】

一 被告らは、原告に対し、別紙道路目録記載の道路について、原告が別紙物件目録記載(一)の土地上に鉄骨造陸屋根三階建店舗兼事務所の建物を新築するために必要な自動車及び工事関係者を通行させることを妨害してはならない。

二 被告らは、原告に対し、各自金九九六万二八〇〇円及びこれに対する昭和五七年六月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

四 訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担とし、その余は被告らの連帯負担とする。

五 この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。

【説明】

当事者の主張の骨子は、次のとおりである。

「一 請求原因

1 当事者

(一) 原告は、別紙物件目録記載(一)の土地(以下「本件土地」という。)を所有し、右土地上に木造平家建店舗一棟(以下「旧建物」という。) を建築して、同所で生花等販売店を営業して、同所で生花等販売店を営業してきた。

(二) 被告鈴木為三(以下「被告鈴木」という。)は別紙物件目録記載(二)の土地を、被告伊勢敏一(以下「被告伊勢」という。)は同目録記載(三)の土地を各所有している。

2 本件道路及び原告の工事のための通行権

(一) 原告及び被告らの右所有地はもと一筆の土地を分筆したものであり、いずれも公道に接しない袋地であることから、別紙道路目録記載の道路敷地(以下「本件道路」という。)として各自がその所有地の一部を提供し、道路負担部分のある土地として取得したものである。つまり、原告は本件道路について囲繞地通行権を有するのみならず、原告と被告らが右のように所有地の一部を道路の一部として提供し合つているのであつて、この提供による道路開設の当初から、右当事者間において、本件道路を道路として共同利用することが合意されているのである。

(二)また、右道路部分は各自の取得当初より道路として開設され、関係住民のために永年公の用に供されてきた。

(三)よつて、原告は本件道路を通行、利用する権利があり、被告らは、原告が後記のとおり本件土地に建物を建築する期間中、工事関係車両等が本件道路を通行することを受忍する義務がある。

3 被告らの妨害行為

(一) 原告は、本件土地上に、鉄骨造陸屋根三階建店舗兼事務所(以下「新建物」という。) を建築することを計画し、同建物につき昭和五〇年一月三一日建築確認を得て、同年三月、旧建物を取り壊した。

原告は、昭和五一年三月八日藤田工務店こと藤田勇一(以下「藤田工務店」という。)と新建物建築について、請負代金一七〇〇万円、工期同月一〇日から同年六月二五日とする請負契約を締結し、藤田工務店は同月九日新建物の建築工事(以下「本件工事」という。)に着工した。

(二) ところで、本件土地は前記のとおり袋地であり、右工事用資材等の搬入のためには本件道路を使用せざるを得ないところ、被告らは、同月一〇日の夜間、本件道路上の二か所に長さ約一メートル、直径約一〇センチメートルの錠付鉄杭を埋没し、これと道路を旋錠して本件道路の通行を妨害したため、原告は本件土地へ工事用資材等を搬入することができなくなり本件工事は中断のやむなきに至つた。

そこで、原告は被告らを相手どつて、大阪地方裁判所に建築妨害排除等仮処分を申請し(同庁昭和五一年(ヨ)第九四三号)、同年五月二九日にその旨の決定を得たが、被告らが右鉄杭を任意に撤去しなかつたため、六月三日執行官による断行の仮処分執行に基づき右鉄杭は撤去された。

ところが、被告らは、六月五日本件道路を閉鎖するトタン塀を右道路上に設置し、再度本件工事を妨害する挙に出たため、原告は再度同裁判所に対し前同様の仮処分申請(同庁同年(ヨ)第二〇一四号)をした。しかし、同年一〇月下旬ころ当事者間で和解が成立し、被告らが原告の本件工事を妨害しないことを約したうえ、トタン塀を撤去したので、原告は一〇月二五日右仮処分申請を取り下げた。

(三) そこで原告は藤田工務店に本件工事を再開させようとしたところ、被告らはまたもや本件道路上に新たにトタン塀及び鉄杭二本を設置して右工事を妨害し、さらに工事妨害をしない旨の約束を否定するに至つた。

(四) 本件工事は被告らの右妨害行為によつて基礎工事の一部を了し掘削したままの状態で中断し、そのままの状態で使用することができず工事再開のめどがつかないので、原告は取りあえず藤田工務店との前記請負契約を解除した。

4 被告らの責任

被告らの前記各行為によつて原告は本件道路の使用通行が妨害され、ひいて本件工事の施行が不可能となつたので、被告らは原告が本件工事施行に関し被つた損害を賠償すべき責任がある。」

【判旨】

第二本案について

一請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。

二同2(一)のうち、原告、被告らの各土地がいずれも公道に接していないこと、被告らが各所有土地の一部を道路として提供しこれが本件道路の一部となつていることは当事者間に争いがなく、<証拠>を総合すると、原告は昭和四七年五月ころ、今西建設株式会社から本件土地を道路負担部分のある土地として購入したこと、その当時、本件土地は既に一部が道路として提供され、前同様これが本件道路の一部となつていたこと、本件道路を含む後記認定の周辺道路(本件道路は別紙図面(二)記載のから本件土地に至る道路の一部である)は本件道路と同様沿道地所有者が所有地の一部を提供して通行の用に供している私道であつて行政庁の道路認定等の処分を受けていないことがそれぞれ認められ、他に右認定に反する証拠はない。

三そこで、本件道路の原告の使用権について以下検討する。

1 まず<証拠>によると、本件土地並びに被告鈴木所有の別紙物件目録記載(二)の土地及び同伊勢所有の同目録記載(三)<省略>の土地はもと一筆の土地が分筆されたものであるが、そのうち、被告伊勢は右(三)の土地を昭和二二、三年ごろ買い受けていたこと、他方、原告と被告鈴木は、昭和四〇年代に入つて、今西建設株式会社から本件土地と(二)の土地の分譲を受けたこと、今西建設株式会社は本件土地と(二)の土地を含む土地を店舗用地として造成し分譲したが、この分譲以前には、本件土地付近の公道に至る道路として、別紙図面(二)記載のから本件土地に至るものとから本件土地に至るものとの二つのみが存しいずれも私道であること、一方、「古賀」と記載された所からの侵入路は右分譲より前には存せず、今西建設株式会社が分譲する際分譲地から道路負担部の提供を求めて造成されたこと、なお、別紙図面(二)記載の「柏里商店街」とある部分の道路及び「古賀」からに通ずる南北の道路はいずれも公道であること、以上の事実が認められる。

2  右に判示したところからも明らかなとおり、原告所有の本件土地はいわゆる袋地であつて、具体的にどの私有地を通行できるかは別として、一般的に囲続地通行権を有するということができる。そして、別紙図面(二)記載のからの侵入路、からの侵入路及び「古賀」からの侵入路が私道として開設されている以上、一般的に囲縄地通行権を有する原告に関する限り、その具体的行使形態は別として、右の三つの侵入路を通行する権利があるというべきである。よつて、原告は「古賀」からの侵入路についてのみ囲緯地通行権を有する旨の被告らの主張は採用することができない。

なお、原告は、原告と被告らが所有地の一部を道路の一部として提供し合つていることから、本件道路を道路として共同利用することが原告と被告らとの間で合意されている旨主張する。しかし、右合意の法的な性質、内容が主張自体明らかではないし、右提供の事実から直ちに、他の所有者の道路提供分まで道路として共同利用することができる旨の合意がなされたとはいい難い。原告は原告と被告らの所有地が囲続地であつてもと一筆の土地が分筆されたことを右合意の根拠として掲げるが、被告伊勢の所有する(三)の土地は、原告所有の本件土地と被告鈴木所有の(二)の土地よりも古くから分筆されていたことは前判示のとおりだし、別紙図面(二)記載のとおり最少幅員約三・五メートルの本件道路の使用についてその使用方法、使用の形態の限定を加えない合意がなされたとは到底いい難いことも併せ考えると、原告主張の合意が成立していたと認めるのは相当ではないというべきである。

3 ところで、本件において原告が求めている本件道路の通行妨害禁止は、原告が本件土地に建築を予定している新建物建築を目的とする通行に関するものである。<証拠>によると、原告は従前本件土地で平家のトタン葺のプレハブ造りのような旧建物を所有していたが、従前から営んでいた生花等販売業を充実させるために新建物建築を計画したことが認められる。前判示のとおり、本件土地及び被告鈴木所有の(二)の土地を含む一筆の土地は店舗用地として分譲され(前掲甲第六号証によると、この付近は国電山陽線塚本駅から至近のいわゆる駅前商店街に属することが認められる。)、分譲当初から本件土地は店舗用地として利用されることが予定されていたし、店舗用地として利用することによつて本件土地の効用が十全となるのである。その他、別紙図面(二)記載のとおり本件道路の最少幅員が約三・五メートルで自動車による通行が可能であること、後記認定の如く、被告らもそれぞれの所有建物新築工事のためかつて本件道路を使用したことがあることなどの諸事情を総合すると、原告が本件土地において店舗用建物を新築するために公道に至る各私道を使用することは、この行使が権利濫用にわたり信義則に反しない限り、原則として許容されるものといわなくてはならない。

四三で判示したとおり、原告は、新築建物を建てるために公道に至る私道の一つである本件道路を本来通行する権利を有するのであるが、被告らは、この権利について制限すべき事情がある旨主張するので、順次判断を加える。

1 車両通行禁止について

本件道路では一般車両の通行が公法上の規則により禁止されていることを認めるに足りる証拠はない。

確かに、<証拠>によれば、本件道路を含む公道からの侵入路は、沿道地の所有者がその所有地の一部ずつを提供して公の用に供している私道であり、車両通行につき従前は異議を述べる者はいなかつたこと、ところが、昭和三九年、ライフが開店して以来、納入業者が商品運搬のため本件道路を含む前記三つの侵入路に頻繁に車両を乗り入れたため、騒音、土ほこり、家屋の損壊等の被害が発生し、近隣住民から苦情が出たこと、そのため、近隣住民のうちには、車の侵入禁止を表示した立札を本件道路等に数か所立てたり、ライフの車が入らないように鉄杭を立てる者が出てきたこと、そこでライフの納入業者は近隣住民と話し合いの上公道に車両を停止し、店舗までは商品を手押車に積みかえて本件道路等を運搬通行していたことが認められる。

右認定事実によれば、近隣住民がとつた右車両通行禁止措置は、恒常的に車両の通行回数が多く、したがつてその被害も多いスーパーマーケットに限定してその正当性が肯認されるものであつて、これを一般化することはできず、むしろ、本件道路は、付近の状況、幅員を含む場所的状況、袋地使用の相当性、本件道路通行の必要性等に鑑れば、本来、工事のための自動車による通行が認められる事情にあり、右ライフの事例はその例外事例にすぎない。しかして、本件においては右ライフの事例にみる如き不相当性は証拠上認められないのであるから、これを一般化して原告に対して車両による通行を禁止すべき理由となるものではない。よつて、原告の有する通行権が歩行者としての通行権に限るとする被告らの主張は理由がない。

2 迷惑料支払について

<証拠>を総合すれば、本件道路等上に杭が設置されるようになつて以降、本件道路等を含む地域内で建物の建築工事をしたのは被告両名及び松谷啓二の三名であること、被告伊勢は、昭和四七年八月ころ、マンション建築をアート建設に注文して工事に着工したが、その際、原告が近隣住民の数名を代表して、建物が損壊した時の賠償、補償金として公道に通じるまでの私道所有者のうち八軒に対し、一件当たり一〇万円計八〇万円の支払を要求したこと、これに対し、被告伊勢としてはもめごとを避けるため原告に対し金五六万円を迷惑料として支払い、原告はこれを町会に分配したこと、被告鈴木が同年四月ころ、建物の建築工事に着工したときも同様、原告、富原、太田、渡部らが、建築工事に伴う道路使用、騒音、下水使用等による補償金として合計金数一〇万円を被告鈴木より受領したことを認めることができ、松谷啓二については原告に対する金員支払の証拠はない。右認定事実によれば、被告らの主張する迷惑料は、建物建築工事の際、近隣建物の破損の補、騒音等近隣に及ぼす損害を補償するために支払われているといえるのであり、その限りで正当な金員の交付であり、しかもこの地域においてはかかる金員の支払が、道路通行につき近隣住民の円満な協力の確保につき果たしている役割を否定しえないところであり、右の限度でこれが地域的な慣行とみられることもあろう。しかしながら、右迷惑料を支払わなければ絶対に自動車による通行はできないとする程の拘束力の根拠はどこにも見出すことはできない。しかも、本件においては、被告ら住民が原告の工事によつてどのような損害を受けるおそれがあるか全くわからない段階の問題であり、迷惑料の名称、支払うべき時期、額、分配を受ける住民の範囲等に何らの定めもなく不確定要素が多いことを考えれば、右金員の支払が、車両通行の可否を決する前提になるものとは到底いえないところである。なる程、前記各証拠によれば、右金員支払につき原告が、かつて主導的役割を果たしていた事実が認められ、且つ、本件において被告らが原告に対し迷惑料を請求してもそれ自体不相当ではないが、それのみでは、前記「迷惑料」の性質から、原告を拘束すべきものといいきれず、右金員を被告らに支払わないからといつて本件通行権が消滅する訳のものではなく、まして被告らが自力救済をすることが容認されるものではないのであるから、原告に禁反言、信義則、権利濫用の違法があるとする被告らの主張は理由がない。

3 権利濫用、信義則違反について

被告らは、原告が本件道路の提供を全くしていないと主張し、被告伊勢本人の供述中にも、原告が天幕を張つて道路の真中まで商売している旨右主張に沿う部分もある。しかし、原告が本件道路のうち原告所有部分を取り込んでいるというには、遮断の態様の継続性、道路としての使用の困難からみて右事実は十分とはいえず、むしろ、右事実は本件とは別問題であり、それによつて被告らが損害を被つている場合には別途妨害排除又は損害賠償をすべきものであり、右事実があるからといつて原告の本件通行権自体が消滅しないことは勿論、原告が本件道路全体の通行を妨害するなどの暴挙に出ない限りは、これをもつて信義則違反、又は権利の濫用として右通行を禁止することはできないものというべきである。

4 他の道路の選択について

被告らは、原告が本件道路を通行使用するのは、他の周辺道路の通行を沿道所有者から拒否されたために止むを得ず追われてきたものであり、他の周辺道路を通行することも可能であり、本件道路を通行しなければならない必然性はない旨主張する。前記認定の如く、本件土地は袋地であるところ、公道に出るためには別紙図面(二)記載の三つの侵入路がある。しかして、袋地からの通行の場所および方法については、通行権を有する者のために必要であつて、かつ囲続地のために損害の最も少ないものを選ぶことを要する(民二一一条一項)。しかしながら、本件においては、前記三つの侵入路とも既に通路として開設されているから、通行自体についていえば、その間に通行による損害の大小に差はないものというべきである。しかも、証人上田英隆、同古賀義則の証言によれば、別紙図面(二)記載のからの侵入路は柏里商店街に通じているところ、右公道は朝八時から夜八時まで車両の通行制限の公的規制があり、「古賀」からの侵入路は、昼間、スーパーライフの客等で混雑していることが認められ、少くとも本件道路よりもより安全で損害が少ない道路が他にあるとの被告らの主張は採用することができず、又、単に通行し得る道路が他に存在することが本件道路の通行権の存在を左右するものではないから、いずれにしても被告らの主張は採用することができない。

五そこで、進んで被告らの違法行為につき検討する。

1 請求原因3の事実のうち、原告が本件工事に着工したこと、被告鈴木が杭を設置した事実、第九四三号仮処分事件の経過に関する事実、被告らがトタン塀を設置し、後撤去した事実、原告が再度仮処分申請し、後に取り下げた事実はいずれも当事者間に争いがない。

2 右争いのない事実、並びに、<証拠>によれば、次の事実が認められる。すなわち

(一) 原告は昭和四七、八年ころ本件土地上に、旧建物を取り壊したうえで、鉄骨造陸屋根三階建店舗兼事務所(新建物)を新築することを計画し、同建物につき、同五〇年一月三一日、建築確認を得、同年三月旧建物を取り壊した。

原告は、同年四月五日、末吉工務店との間で、請負代金一七五〇万円、工期三か月の約定で建物建築請負契約を締結し、同日五〇〇万円を支払うとともに地鎮祭を済ませた。

翌六日、末吉工務店が工事に着工したが、その日の夜、被告鈴木は本件道路上に長さ一メートル、直径一〇センチメートルの錠付鉄パイプ一本を打設した。原告と末吉工務店は被告鈴木と交渉したが、同被告は迷惑料として一五〇万円を要求したため金銭面で折り合わず、工事が続けられないので、原告はやむなく末吉工務店との請負契約を解約した。

(二) その後、原告は右工事の施工業者を探していたが、昭和五一年三月八日、藤田工務店との間で請負代金一九五〇万円で請負契約を締結し、頭金二〇〇万円を支払つた。

藤田工務店は三月九日、本件工事に着工し、鉄線やブルドーザを本件道路に入れ基礎コンクリート打設にとりかかろうとしたところ、同日夜、被告鈴木は本件道路上二か所に前同様の錠付き鉄杭二本を埋没し、これと道路とを施錠した。右鉄杭の打設のため、工事用車両の通行が不可能となつた。

そのため原告及び藤田工務店は、大阪地方裁判所に対し、被告鈴木を相手どつて前記鉄杭の撤去、本件道路の通行妨害禁止等を趣旨とする仮処分を申請し(昭和五一年(ヨ)第九四三号)、同年五月二九日にはその旨の決定を得たが、被告鈴木は任意の撤去をしなかつたため、六月三日、執行官が右決定に基づき執行に着手し、前記鉄杭を除去した。

ところが、同日夜、被告両名は、本件道路上に道路を閉鎖するトタン塀を設置し、右塀に沿つて植木を並べ、また前同様の鉄杭を打設して本件道路の通行を妨げた。そこで原告は、やむなく、同年六月二一日付けで被告両名を相手に同前様の仮処分を申請した(同年(ヨ)第二〇一四号)が、数回の審尋を経て裁判所の和解勧告がなされ交渉の結果、被告らは右トタン塀を撤去したのち、本件工事の妨害はしない旨約束したため原告は右仮処分申請を一〇月二五日に取り下げた。

(三) そこで、原告が、藤田工務店に本件工事を再開させようとしたところ、被告らはまたもや本件道路上に前同様のトタン塀、鉄杭を設置して車両の通行を妨害したため本件工事ができなくなつてしまつた。そのため原告は、昭和五四年六月ころ藤田工務店との請負契約を解除した。

(四) 被告らは原告の本訴提起後、右トタン塀、鉄杭を任意に撤去した。

以上の事実が認められる。右認定に反する被告鈴木、同伊勢の各供述部分は措信できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

3  右認定事実をもとに、被告らの責任を検討するに、前記のとおり原告は本件道路を車両で通行する権利を有するところ、原告の本件工事(新店舗兼事務所を建築するもので、それ自体違法と認める証拠はない)を鉄杭の打設、トタン塀の設置という有形力をもつて再三にわたり妨害したこと、右妨害の理由、動機として、本件工事による顕著な損害等が現認又は予想された訳ではなく、被告らが原告から強く迷惑料を要求され支払つたのに対し、原告が迷惑料を支払うことなく本件工事を強行しようとしたことなく本件工事を強行しようとしたことに感情的に強く反発したことが主因であると推認されること、したがつて右妨害行為自体には被告ら以外の付近住民は直接関与しておらず、原告、被告ら間のみの対立抗争関係の様相を呈していること、そして原告は前記の如く二度も仮処分申請をなし、第三者が介入して話し会いの場が持たれ、且つ妨害禁止を命ずる裁判所の仮処分決定が出されたにも拘らず、被告らはこれに従わず妨害行為を反覆していることさらに第二回目の仮処分申請の際、被告らは以後妨害しない旨約したにもかかわらずこれを無視し執ように妨害を継続したこと等を考え併せると、被告らの前記妨害行為は著しく度を越したもので原告の本件道路を通行する権利を侵害する違法な行為といわなければならない。しかして、原告は、被告らの右通行妨害行為によつて本件土地上の建物新築工事は基礎コンクリート打設直前で中断し、以後これが放置されているものであるから、右通行妨害行為と本件工事の妨害との因果関係は明らかであり、したがつて、被告らは原告に対して、本件通行妨害行為の将来にわたる禁止とともに、右妨害行為によつて原告が本件工事につき生じた損害の賠償をすべき責任がある(なお、第一回めの仮処分までは被告伊勢の妨害行為の内容は証拠上明らかでないところもあるが本件通行妨害行為についての被告両名の関与の方法、程度は密接に関連しており社会的には一体の行為というべきであるから被告両名の本件行為に違法性の軽重をつけるべき事情にあるものとは考えられない)。

六原告の損害について

1〜4<省略>  5  当裁判所は、原告にも本件損害を発生させかつこれを拡大させたことについて原因となる落度があつて、これを、被告らが原告に対して賠償すべき損害算定に当たり考慮すべきであると判断する。

すなわち、前判示のとおり、被告らがその所有地に建物を建築する際、原告は他の付近住人とともに、補償金として、本件道路を含む公道へ通じる私道所有者に対する数十万円の迷惑料支払を要求し、被告らはこれに応じて迷惑料を支払つていたのである。しかも、被告伊勢本人尋問の結果によると、同被告が建物を建てる際、原告は、別紙図面(二)記載の位置に自ら杭を打ち、そのかぎを自分で保管していたことが認められ、原告もまた、本件道路に通じる私道通行を被告らに自由に許していたわけではないことが明らかである。これに反し、原告が本件土地上に新建物を建てるに際しては、建築用車両通行の迷惑料を被告らに提供することを一切せず、近所へのあいさつ回りも請負業者や娘むこの上田英隆に行かせただけで自らは何らのあいさつ回りをも事前にしなかつたことが原告本人尋問の結果(第一回)から認められる。

迷惑料支払が確立した慣行となつていないことは前判示のとおりであるが、従前被告から建物建築の迷惑料を受け取つていた原告としては、自ら建物を建てるために車両が本件道路を通行するには、原告自身で沿道住民に誠実にあいさつ回りをして、迷惑料支払の件を自分の方から提案すべきだつたのであり、過失相殺の面ではこれらの点が斟酌されざるを得ないというべきである。

なお、原告本人(第一回)は、被告らに対する二〇一四号仮処分申請事件の審理中に、原告が被告らに金二〇〇万円を交付した旨供述するが、これは、被告両名本人尋問の結果に照らして措信できない。

しかして過失相殺の割合は、三割と解するのが相当であり、これを前判示の損害額から控除する(前判示1の営業損害については全損害は二一四八万円であることが認められそれより前記過失割合により減額した額である一五〇三万六〇〇〇円は原告の一部請求額五七〇万円を越えるから結局請求額五七〇万円の全額を認容すべきこととなる。)と、原告が被告らに対し求めうる損害金は九〇六万二八〇〇円となる。

<以下、省略>

(久末洋三 塩月秀平 中本敏嗣)

物件目録<省略>

道路目録

別紙物件目録記載(一)、(二)、(三)の土地によつて形成される道路(幅員三・〇五メートル、別紙図面(一)記載斜線部分)

図面(三)省略

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